口約束はNG!離婚後の「支払い踏み倒し」を防ぐ方法|公正証書の作り方と強制執行のメリット
離婚の話し合いが進み、「財産分与で〇〇万円支払う」「養育費は月々〇万円」という合意が取れると、ホッと一安心してしまうかもしれません。しかし、実はここからが本当の正念場です。
残念ながら、離婚時に交わした約束が守られず、支払いが途絶えてしまうケースは後を絶ちません。特に専業主婦(主夫)として生活してきた方にとって、離婚後の安定した入金は命綱です。
「信頼していた相手だから大丈夫」という主観的な期待は捨て、客観的な**「法的強制力」**を持たせることが、あなたの未来を守る唯一の手段です。この記事では、支払い踏み倒しを鉄壁の守りで防ぐ「公正証書」の作成術と、最強の武器である「強制執行」について詳しく解説します。
1. なぜ「口約束」や「自作の書面」では危険なのか?
離婚届を出す際に、当事者同士で話し合って決めた内容をメモ書きにしたり、口頭で約束したりするだけでは、法的な拘束力が不十分です。
言い逃れのリスク: 「そんな約束はしていない」「あの時は無理やり書かされた」と主張される。
裁判の手間とコスト: 支払いが滞った際、自作の書面(離婚協議書)だけでは、相手の財産を差し押さえるために改めて裁判を起こさなければなりません。これには多額の弁護士費用と1年以上の年月がかかることがあります。
これに対し、**「公正証書(こうせいしょうしょ)」**を作成しておけば、裁判を飛び越えて即座に相手の資産を差し押さえることが可能になります。
2. 支払い踏み倒しを防ぐ「最強の盾」:公正証書とは?
公正証書とは、公証役場で「公証人(元裁判官や検察官などの法律のプロ)」が作成する公文書のことです。
最大のメリットは、書面の中に**「強制執行認諾文言(きょうせいしっこうにんだくもんごん)」**という魔法の一文を入れられることです。
強制執行認諾文言の例:
「債務者が本証書記載の金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行を受けても異議ないことを承諾した」
この一文があることで、相手が1円でも支払いを怠った瞬間、あなたは裁判所の力を借りて相手の給料や銀行口座を凍結・回収できるようになります。
3. 公正証書に入れるべき「必須項目」リスト
財産分与や養育費の取り決めで、漏れがあってはならない項目をまとめました。
| 項目 | 具体的な内容 |
| 清算的財産分与 | 現金、預貯金、不動産の持分、車などの具体的な金額と支払期日。 |
| 養育費 | 月額、支払期間(20歳までか、大学卒業までか)、増額・減額の条件。 |
| 慰謝料 | 離婚原因(不倫・DV等)に基づく損害賠償額と支払い方法(一括・分割)。 |
| 年金分割 | 厚生年金の標準報酬を分割する旨の合意。 |
| 通知義務 | 住所変更、転職(勤務先変更)、再婚などの際に報告する義務。 |
| 清算条項 | 「これ以上、互いにお金の問題を蒸し返さない」という最終合意。 |
4. 踏み倒された時の切り札「強制執行」の威力
もし相手が「今月は苦しいから払えない」と支払いを止めた場合、公正証書があれば以下の財産を差し押さえられます。
給料の差し押さえ: 最も強力な手段です。相手の勤務先から直接、あなたに支払われるようになります。相手にとっては「会社に離婚トラブルがバレる」という強い社会的プレッシャーにもなります。
銀行口座の差し押さえ: 銀行名と支店名がわかれば、預貯金を強制的に回収できます。
不動産・動産: 自宅や車を競売にかけ、その代金から未払い分を回収します。
この「いつでも差し押さえられる」という状態を作っておくこと自体が、相手に対する強力な抑止力となり、結果として支払いを継続させる効果を生みます。
5. 公正証書作成の具体的な流れ(3ステップ)
ハードルが高そうに見えますが、手順は意外とシンプルです。
ステップ1:夫婦で条件を合意する
まずは話し合いで「何を、いつまでに、いくら払うか」を決めます。ここが最も大変なプロセスですが、プロ(弁護士)に代理交渉を依頼することも可能です。
ステップ2:公証役場へ申し込む
近くの公証役場に連絡し、合意内容を伝えます。案文(下書き)を公証人が作成してくれます。
ステップ3:当日、二人で署名・捺印する
予約した日に夫婦揃って公証役場へ行き、内容を確認して署名します。手数料(数千円〜数万円、対象金額による)を支払えば、その場で公正証書が完成します。
※相手と顔を合わせたくない場合は、代理人を立てることも可能です。
6. 専門家への依頼費用を惜しまない理由
「公正証書を作るのにお金がかかるのが嫌だ」と躊躇する方もいますが、これは投資だと考えてください。
確実な回収: 数万円の手数料で、将来の数百万円(あるいは数千万円の養育費)の未払いを防げます。
心理的安定: 毎月「今月は振り込まれるかな…」と不安になるストレスから解放されます。
特に、相手が自営業者の場合や、過去に金銭トラブルがあった場合は、必ず弁護士にリーガルチェックを依頼し、抜け穴のない書面を作成することをおすすめします。
まとめ:あなたの権利を「紙の約束」で終わらせない
離婚はゴールではなく、新しい生活のスタートです。そのスタートラインで経済的に躓かないためには、感情に流されず、事務的に「証拠」と「強制力」を固めることが大切です。
口約束は1円の価値もないと心得る。
「公正証書」は必須。必ず「強制執行認諾文言」を入れる。
給料の差し押さえができる状態を作ることが、最大の防衛策。
「冷たいと思われるかも」なんて遠慮は不要です。これは、あなたと(もしお子さんがいれば)お子さんの当然の権利を守るための正当な手続きなのです。
離婚時の財産分与で損をしないための完全ガイド!相場から隠し財産対策まで専門家級に解説