離婚届を出す前に「公正証書」を作るべき3つの理由|養育費と財産分与で後悔しないための防衛策


「一刻も早く離婚届を出して自由になりたい」

「相手とはもう話し合いたくないから、署名だけもらって終わりにしたい」

そのお気持ち、痛いほどよくわかります。精神的に限界が来ているときほど、面倒な手続きを後回しにして「とにかく今の状況を脱却すること」を優先してしまいがちです。

しかし、「公正証書」を作らずに離婚届を提出してしまうのは、将来の自分と子供の生活を「相手の善意」という不安定なものに預けることと同じです。

この記事では、離婚後の生活を金銭面で守り、無駄な争いを避けるために、なぜ「公正証書」が必須なのか。その具体的なメリットと作成のポイントをわかりやすく解説します。


1. 理由①:支払いが止まったら即「差し押さえ」が可能になる

公正証書の最大の武器は、**「強制執行認諾文言(きょうせいしっこうにんだくもんごん)」**という魔法のフレーズを入れられる点です。

通常、離婚後に養育費の支払いが滞った場合、相手の給料を差し押さえるには、家庭裁判所に調停を申し立てたり、裁判を起こして勝訴したりする必要があります。これには数ヶ月以上の時間と、多大な精神的エネルギー、そして弁護士費用がかかります。

しかし、この文言が入った公正証書(執行証書)があれば、裁判を経ることなく、直ちに相手の給料や銀行口座を差し押さえる手続きに入ることができます。

  • 心理的抑止力: 「支払わないと即座に会社にバレる(給料差し押さえ)」というプレッシャーが相手にかかるため、未払いの発生自体を防ぐ効果が非常に高いです。


2. 理由②:口約束や私的なメモより圧倒的に「証拠能力」が高い

夫婦間で「毎月5万円払う」と約束して、普通の紙に書いた「念書」や「合意書」。これらも法的な意味はありますが、公正証書とは重みが全く違います。

公正証書は、法律の専門家である公証人(元裁判官や検察官など)が作成する公的な書類です。

  • 偽造や紛失のリスクがない: 公正証書の原本は公証役場で原則20年間(またはそれ以上)厳重に保管されます。「そんな書類は知らない」「無理やり書かされた」という言い逃れや、紛失して証拠がなくなる心配がありません。

  • 内容の正確性: 法律に反するような不当な取り決めは公証人がチェックするため、書類自体の無効化を防げます。


3. 理由③:財産分与や年金分割の取りこぼしを防ぐ

離婚届を先に出してしまうと、その後の話し合いにおいて、相手が非協力的になるケースが多々あります。「もう他人だから関係ない」と連絡を絶たれてしまうと、本来もらえるはずだった資産を諦めざるを得なくなります。

公正証書を作成する過程では、以下の項目を網羅的に話し合い、明文化します。

  • 財産分与: 預貯金、不動産、退職金、保険の解約返戻金などをどう分けるか。

  • 慰謝料: 不貞行為やDVなどがあった場合の支払い条件。

  • 年金分割: 将来受け取る年金の受給額に関わる重要な手続きの合意。

これらを「離婚届の提出前」という、相手が「早く離婚したいから譲歩しよう」と考えやすいタイミングで確定させておくことが、賢い防衛策といえます。


公正証書作成の具体的なステップ

  1. 条件の合意: 夫婦で養育費の額、期間、面会交流のルールなどを話し合う。

  2. 公証役場へ申し込む: 近くの公証役場に連絡し、案文を伝える(メールやFAXで可能な場合が多いです)。

  3. 必要書類の準備: 戸籍謄本、印鑑証明書、年金分割のための情報通知書など。

  4. 当日、二人で署名: 公証役場に二人(または代理人)が出向き、公証人の前で署名・押印し、完成。

費用について

公正証書の作成には手数料がかかります。金額は分割対象の金額によりますが、数万円程度であることが一般的です。これを「将来の安心を買うための保険料」と考えれば、決して高くはありません。


結論:離婚届は「公正証書」の完成を確認してから

「早く別れたい」という焦りは、相手にとって有利な条件を呑まされる原因になります。

離婚届は、公正証書が手元に届き、内容に間違いがないことを確認してから提出しても遅くはありません。

新しい人生をスタートさせるために最も必要なのは、自由な時間だけでなく、それを支える「経済的な安心感」です。

もし今、相手と話し合うのが難しい状況であれば、弁護士や行政書士などの専門家に相談して、間に入ってもらうことも検討してください。